こんにちは。奈良県議会議員団[奈良県議団]です。

[2014.8.27] -[政策活動日誌]

唯一基地のない平和な奈良県を守ろう!

五條市への自衛隊基地誘致はやめるべきです

自衛隊は減災には役立たず、基地があることで市民の安全はかえって危険に

日本共産党奈良県議団が市長、市議会議長あてに要望

太田五條市長(左から3人目)に申し入れる今井県議(その右)ら(8月22日)

 奈良県と五條市は、全国で唯一陸上自衛隊基地・駐屯地がない県・奈良県として基地誘致活動を展開しています。今年、奈良県は五條市に自衛隊ヘリポート基地を開設する方向で調査、検討をすすめるための予算、3事業に3000万円を計上。その前に政府はヘリポート設置のための調査費100万円を予算に組みました。さらに、五條市も自衛隊啓発活動のための140万円を予算化しています。

 なぜ、自衛隊基地誘致なのか?奈良県は「全国で唯一陸上自衛隊基地・駐屯地がない」ことを理由にあげていましたが、当初、政府と自民党は「自衛隊は国防を目的とした部隊であり、基地がないからと基地をつくる理由にはならない。国防上なぜ必要かを示すべき」と否定的回答。3年前に紀伊半島大水害を経験し、「防災活動の拠点となるヘリポート基地をまずつくってほしい」と要望を切り替えたことで、政府、関係機関も「動き始め」(五條市長談)、予算がつくことになりました。

 7月1日、安倍自公政権は憲法9条を閣議決定で解釈を変え、集団的自衛権の行使を容認することをやりました。海外のアメリカがおこなう戦争に日本の若者を送り、殺し殺される戦闘行動に動員することができる日本になるということで、憲法9条にある日本では絶対に許されないことです。自衛隊がその性質を大きく変えている中での自衛隊基地誘致活動は、再検討がなされるべきです。

 日本共産党奈良県会議員団は議会質問で次の主張をおこないました。

 ①基地を誘致するのは防災のためというが、紀伊半島大水害の時、自衛隊が活躍したが、知事の要請をうけて災害が発生して後に、しかもヘリコプターは雨がやんでからきており、災害の発生予防、減災の活動は地元自治体、消防、地元企業などが取り組んでいたし、豪雨時も地元消防団などが対応していたこと、さらに、大型ヘリは近接の基地(八尾等)から約10分で到着できること。自衛隊は国防を任務とする部隊であり、災害救援は訓練の一部にすぎないこと。このため、国は災害救助隊をつくるべきであり、県など自治体は防災力、消防力を抜本的に強めることが求められている。自衛隊は「減災」や「安全なまちづくり」に役立つことはないということです。逆に、米軍といっしょに海外で戦争をする国になれば、出撃基地となる自衛隊基地は攻撃の的にもなります。市民にとって、思わぬ危険をまねくことにもなります。

 ②自衛隊は「自己完結型」(知事の答弁)組織で、装備もととのい、救援活動もしっかりやってくれると説明がされていますが、その点、市民が望むことをやってくれるわけではありません。また、県や五條市は部隊がくることで地元への経済効果があるかのように宣伝していますが、自衛隊は財政活動でも「自己完結型」です。2年前に自衛隊基地を誘致した徳島県では市に税金は入らない、買い物も基地内で調達と、経済効果はないことが報告されています。

 今回の要望では、自衛隊基地誘致活動はやめて、地域の防災力、消防力強化に力をいれてほしいむねの申し入れをおこないました。

 申し入れのあと、JR五条駅などで街頭から訴えもおこないました。

***

 申し入れ書全文は次のとおり。

 

                                2014年8月22日

五條市長 太田 好紀 様

                   奈良県平和委員会

代表 溝川悠介

                   安保破棄奈良県実行委員会

                   日本共産党奈良県会議員団

団長  県会議員 山村 幸穂

県会議員 今井 光子

県会議員 宮本 次郎

県会議員 小林 照代

県会議員 太田  敦

日本共産党五條市議会議員    大谷 龍雄

  

五條市への陸上自衛隊駐屯地誘致に反対する要請書

 

日頃、市民の命と暮らしを守る市政の実現をめざし奮闘されていることに敬意を表します。

 

 さて、五條市は、「地域の振興、防災力向上」のため陸上自衛隊駐屯地誘致に積極的に取り組まれていると聞いています。この件に関し、私たちは以下の理由で反対を表明するものです。

 自衛隊法第3条は「自衛隊はわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略、および間接侵略に対しわが国を防衛する事を主たる任務とし必要に応じ公共の秩序の維持に当たるものとする」とされており、自衛隊は災害時の救援や防災を専門的に行う組織ではありません。そのための訓練も日常的に行っていません。自衛隊の本質は、憲法9条に違反する違憲の軍隊であり、日米安保条約のもとで、米軍を補完する従属的な軍事組織です。

 7月1日、安倍政権は、歴代政権がとってきた集団的自衛権をめぐる憲法解釈を大転換し、現行憲法のもとでも集団的自衛権の行使は認められるとする、憲法解釈変更の閣議決定を、国民多数の反対の声を踏みにじって強行しました。

これは、かつて日本が2000万人以上のアジア太平洋の人々と、310万人以上の日本国民の命を奪った侵略戦争の痛苦の反省の上にうちたてられた、日本国憲法9条を、一内閣による憲法解釈変更の閣議決定によって根本から破壊しようとする、戦後最も重大かつ明白な憲法破壊の暴挙です。

安倍首相は、この閣議決定について、「従来の憲法解釈についての考え方と変わらない」「行使は極めて限定的」などと、しきりに強調しています。しかし、これが自国への攻撃に対する反撃(個別的自衛権)だけを認める従来の政府見解を根本から変え、政府の判断一つで海外での戦争に日本が参加することに道を開くものであることは明白です。何が日本に「危険」をもたらす事態かの判断は、時の政府に委ねられています。その対象となる事態に地理的制限はなく、反撃に加わる対象となる「密接な関係にある他国」にも制限がありません。政府の判断一つで、地球規模で自衛隊が様々な武力行使に参加することができるようにするものであり、そこに明確な歯止めはありません。これは、自衛隊員はじめ日本の若者をアメリカ等の戦争に動員し、海外で「殺し殺される」ことにひきずり込む道です。

 昨年12月17日、安倍内閣は「国家安全保障戦略」と新たな「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画(2014~18年度)」を閣議決定しました。国家安保戦略は「積極的平和主義」を国家安全保障の基本理念として掲げ、防衛大綱・中期防は、陸上自衛隊に「水陸機動団」の新編を初めて打ち出し、水陸両用車52両やティルト・ローター機(オスプレイ)17機の導入を盛り込み、本格的な敵地への強襲上陸を可能とする部隊の新編にふみだそうとしています。さらに「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる」と明記し、敵基地攻撃能力の保有につながる規定を盛り込んでいます。中期防の総額は、5年間で24兆6700億円。前中期防に比べ1兆8000億円増。滞空型無人機3機、機動戦闘車99両、新型の空中給油機3機、イージス艦2隻の追加など、軍備増強のオンパレードです。

今や自衛隊は、かつての「専守防衛」を投げ捨て、侵略的な軍隊に変貌しているのです。

 

五條市への自衛隊駐屯地誘致は、災害救助や日本防衛とは関係のない、海外での戦争への新たな出撃基地建設となることは明らかで、攻撃対象にされる危険があります。

すでに自衛隊駐屯地がある所では、地域社会に自衛隊が入り込み、市民に対する「親近感」を高めるための様々な活動が展開され、若者に対し自衛隊への勧誘活動が積極的に行われています。これは奈良県の青年を再び戦場へ送る道につながります。

さらに、陸上自衛隊駐屯地が米軍の演習拠点として使用される危険性もあります。すでに陸上自衛隊の基地158箇所中88箇所が日米で使用されています。五條市に自衛隊駐屯地が建設されると、そこが拠点となり、紀伊半島の山岳地帯一帯がオスプレイの危険な軍事訓練場となることも危惧されます。

 

災害救援体制の強化、防災力向上のためには、消防力の強化こそが求められます。地域振興は平和産業による町おこしこそが望まれます。米軍基地が集中している沖縄では、基地は経済振興の障害であるとして、新たな米軍基地の建設に県民が立場をこえて反対の声をあげています。

五條市には世界遺産「大峯奥駈道」、賀名生皇居跡を始めとする南朝ゆかりの数々の遺跡、奈良時代の遺構・国宝八角円堂、明治維新の先駆けとなった天誅組ゆかりの地、そして、全国で88番目の重要伝統的建造物群保存地区に選定された、江戸時代の風情を残す五條新町地区などがあります。これらの文化遺産を生かした、平和の町・五條市を発展させることこそ、市民・県民が望んでいることだと考えます。

以上の理由により、五條市内への陸上自衛隊駐屯地誘致活動を直ちに中止することを強く要望します。

                   (了)