奈良県は国保運営方針を見直し、市町村から県に納付される納付金を国保料収納実績による納付額決定ではなく、市99%、町村97%と決めて納付額を決定する方法に変えることを提案しました。ほとんどの市町村がこの収納率を達成していないことから、県納付金がアップ。このことによって市町村は国保料引き上げをするか、借り入れなどどこかから調達をして納付することになります。県は同時に、高くなりすぎて支払えない保険料となっているため、市町村独自の基準で保険料を減免したり、一部免除したりしていますが、県が示す以上の減免・免除はさせないとばかりに新基準(マニュアル)を示して、実行させようとしています。
11月県議会
厚生委員会
山村幸穂議員の質問
*議会の音声資料から作成したもので公式の会議録ではありません
日本共産党奈良県会議員団
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国民健康保険運営方針の見直し
県主導で国保料滞納者への徴収強化、市町村には収納実績以上の「納付金」納付を押し付け。「払いたいのに払えない高い国保料」問題解決に逆行する奈良モデル事業
山村幸穂議員 最初に、国保の運営方針についてであります。先ほど説明していただきました収納対策の強化といたしまして長期の分納を認めず、分納期間は原則1年あるいは短期証は1か月とするなどのことが定められておりますけれども、実際には払いたくても払えない、払う意思がある人が分納少額でも頑張って行っているという例もあります。それも認めないということになりますと、あまりにも取り立てが強硬ではないかということで、批判の声がたくさん寄せられてまいりました。
今、新型コロナの感染拡大の状況の下で、短期証をやめて保険証をいつでも使えるようにするという努力も、現場でなされている状況があります。そういう時に、この国民皆保険制度ですべての人が医療を受けられるようにする制度という国保の趣旨に反しているのではないか。医者に掛かりづらくなってしまうようなことになると、これは問題があるのではないかと思っているんですが、この運用についてどのようにお考えなのかお伺いしたいと思います。
森川医療保険課長答弁 今般の国保運営方針の見直しは国保財政の安定化と県民負担の公平性をよりいっそう高めるためのものであり、その内容は県と全市町村とで議論を重ね、合意を得たものでございます。
委員からご指摘のございました収納対策についても、県民の保険料負担の抑制を図るため、県全体の収納率の底上げを図るとともに、市町村格差を是正し、公平性を高めるための取組でございます。
なお、コロナで大変な時期にとお話でございますが、厚生労働省の11月30日付通知において、市町村窓口での感染拡大の防止のため。新型コロナウイルス感染症にかかる受診は資格証明書でもおこなえることとされるなど国保事務において感染拡大防止に配慮することは当然でございます。ただ、このことと収納対策に関して一般的な事項を定めた対策マニュアルの内容は何ら矛盾するものではないと考えております。
今回の国保の見直しの内容につきましては、国保財政の安定化と県民負担の公平性を向上させ、被保険者の受益と納得感をより高めるためのものであり、合意いただいた全市町村とともに取り組んでまいります。
山村幸穂議員 今回の国保運営方針の改訂については全市町村が合意をしているでありますとか、公平性を高めるためであるということで何ら問題がないというような回答であったと思いますが、そもそも、国保加入者には無職や非正規雇用の方が中心で低所得の人々の医療をささえるセイフティネットの役割があるものですし、加入者には高齢者が多いため、医療費が高くなるという実態がありますので、どうしても保険料の負担というのが大きくなって、収納できにくくなる、収納率が低くなるというのは構造的な問題があるというのがもともとの国保全体の問題だと思います。
そういうもともとの問題についてどのようにしていくのかということなしに、収納率のみに焦点をあてて、高すぎる保険料そのもののことについて検討がなされないということになるとしますと、これは国保の本来の役割にあわないことではないかと私は思います。
そういう状況の中で市町村が一般会計から繰り入れをおこなう、そうせざるをえない状況もあるわけで、それを国に代わって社会保障を守ろうと言う市町村も本来の役割を果たしていることだと思います。国では今、自助、共助と総理自ら強調されていますが、まずは個人の努力、次には互いに助け合えということで県が肩代わりをして、市町村にお互いの助け合いだからということで仕向けて行くというやり方そもそもが、私は間違っているというふうに感じております。
次に伺いますが、市町村が独自に実施している減免措置を認めずに国の定める5要件に統一するという事についても疑問があります。
市町村が独自に住民の実態に応じて減免をされているということは法でも認められていることでありますし、住民の実態に即して、市町村がやっていることを上から、合意があるからという理由でやめさせるということはできないと思いますが、それはどうなんでしょうか。
森川医療保険課長答弁 現在、市町村が実施しております保険料の減免につきましては、各市町村が独自に条例で減免基準を定めており、市町村で差異があるところでございます。
同じ所得・世帯構成であれば県内どこに住んでいても保険料水準は同じという保険料負担の公平性を図ると言うようにしておりますが、それを実質的に担保するためには保険料の減免についても基準の統一を図ることが必要でございます。そのため、これまで市町村と議論、検討を重ね、この度の国保運営方針の見直しの中で、減免基準の統一を図る、これについて全市町村と合意をしたというところでございます。
山村幸穂議員 保険料を統一するのだから減免も同じという考え方だと思います。しかし、統一された保険料が払えるものならともかく払えないという状況がどうしても起こってくる、個別具体にはいろんな事情の方がいらっしゃいます。そういう人に対して市町村が自ら地方自治の精神で、当然の責務で、そういう方を救っていこうとされる、それについて、そういうことを認めないというのは地方自治のあり方として間違っておりますし、法にも反しているのではないかと思いますが、これは法的に良いのでしょうか。
森川医療保険課長答弁 法律では条例に定めるところによりということになっております。今回、市町村と議論を重ねたこの方針につきまして、各市町村において今後、条例改正など必要な手続きを経たうえで、こういった考え方で対応するということであれば法令上、何の問題もないところというふうに考えております。
山村幸穂議員 ということであれば市町村がそういう条例にならなければ認めるということであるということですね。
森川医療保険課長答弁 法律の手続きとしましては条例で定めるということになりますので、当然、条例改正という手続きが必要でございますが、今般の減免基準の統一ということにつきましては、これまで市町村と議論を重ねた結果、それが適切であるという合意の下でこれを決めたところでございますので、当然、それに即して各市町村において適切な対応をいただけるものと考えております。
山村幸穂議員 その合意をされましたのは市町村の代表であったり担当者の方が合意されたという事で、そこに住んでおられる住民の皆様が合意をされたということではないと思いますし、当然、議会での審議という事にもなると思います。おっしゃるように必ずこれが決まるというふうに私は思えないのですかれども、それがどうなるかはともかくとして、やはり、なぜ減免制度を独自につくってこられたのか、そこに思いを致さなければならないというふうに思います。
やはり、困っている方をちゃんと救済できるようにということで、医療からはぐれることがないようにと市町村は積極的な役割を果たしてこられたのだと評価をすべきものだと思います。なので、県のやり方ではなく、国による制度の改善。結局、この根本的な問題は国保に対する国の国庫補助、負担割合があまりにも少ないというところに大きな問題がある、その根本原因にせまっていかなければ、市町村でいろいろ苦労して、実際に滞納整理にあたっている職員の皆さんがどんな思いで、それに当たっているかということをお聞きしますと、つらい思いをしながら、それでも皆のためにということでやっておられるという状況もある、そういう人たちにさらに追い打ちをかけるというようなやり方ではなく、国に対してきちんと求めるべき求めていくべきというふうに私は考えますので、意見として申し上げておきます。
(了)