2021年2月議会
一般質問
2021・3・9 小林照代議員の質問
*音声資料から作成したもので公式の会議録ではありません
日本共産党奈良県会議員団
1 保健所について
小林照代議員 新型コロナウイルス感染症の出現により、昨年私たちは多くの経験を積み、新型ウィルスと対峙するため新たな知識を手にしたにもかかわらず、感染制御は苦戦を強いられ、いまも先行きが見えていない状況にあります。無症状や軽症の人が感染を広げる新型コロナウイルスの性質によるものでもありますが、それだけでもありません。
2009年のインフルエンザ・パンデミックを経て、保健所や検査体制の強化、医療の整備、情報発信の改善など必要な備えが指摘されていながら、その対策が行われてこなかった上に感染症へのリスクが高まる都市化やグローバル化への警戒心も薄かったなどの複合的要因が今日の日本の状況です。感染拡大を防ぐために「大規模な検査が必要」と早くから指摘されていたPCR検査は、窓口となる保健所の体制が追い付かず、国が責任をもって行うことができず、第3波をむかえても、検査数は世界で149番目という遅れた状況から脱していません。
このコロナ禍の中で、奈良県下の保健所も程度の差はありますが、非常に多忙を極めています。昨年7月の郡山保健所では、保健師の超過勤務時間は平均で70時間、中には100時間を超える職員もいるという状況が明らかにされています。今第3波の感染の波は衰えを見せていますが、保健師をはじめとする保健所職員はいまなお緊張の連続で疲弊した状況が続いています。この状態を一刻もはやく解消し、検査の大規模な拡充をすすめ、医療につなぎ新型コロナウイルスのこれ以上の感染拡大を許さないことが求められています。その際に保健所が果たす役割は非常に大きいものがあります。また、1994年に保健所法が地域保健法に改正され、保健所が行う事業として医事及び薬事・精神保健・治療方針が確立していない疾病(難病)に関する事項が加えられることになりました。
このように、保健所の果たす役割は現在、一層重要なものとなっています。今後も保健所の機能や体制について、強化をしていく必要があります。
知事にお尋ねします。保健所の役割が益々重要となる中、県の保健所全体の機能や体制の強化を図っていく必要があると考えますが、今後どのように進めていかれるのでしょうか。
また、全国の保健所は、1992年から2019年までの27年間で852ヶ所から472ヶ所へ、380ヶ所(45%減)も削減されています。奈良県でもかつて奈良、生駒、高田、橿原、榛原、下市、川上、五條と8ヶ所あった保健所は、徐々に減少し、20177年に桜井と葛城保健所の統合により、奈良市の奈良保健所を含め5ヶ所に減少しています。しかも、中和保健所の管轄人口は56万人をこえ、その面積は奈良、郡山との比較では3倍近くの広さです。私のもとには、保健所が遠くて相談に行けないといった声や、中和保健所高田出張所では、助成制度の申請受付はしてもらえるが、相談ができないなどといった声が届いています。
1月末に共産党県議団で吉野・内吉野保健所に伺いました。新型コロナウイルスの感染者は両保健所とも20人から30人程度で、13年前から、両保健所の所長さんは兼任ですが、協力連携して日頃から業務を行なっているとのことでした。ただ医療機関が遠いということがあり、一人暮らしの人の搬送などに苦労があるというように感じました。
知事にお尋ねします。吉野保健所と内吉野保健所が統合されると聞いていますが、統合後の機能や体制はどのようになるのでしょうか。
荒井正吾知事答弁 県が設置しております保健所は4か所ございます。その業務は広範囲で多岐にわたっております。食中毒などの食品衛生、旅館業法などに関する生活衛生、動物愛護などの獣疫衛生、医療監視、健康づくりや母子保健、難病対策や精神保健、そして今回のコロナ感染症対策といった業務を広範囲に担っていただいています。
今回の新型コロナ対応におきましても、最前線で非常に頑張っていただいたと思っております。また、住民と密接な関係にあります市町村の保健師に対する支援や業務指導なども重要な業務としておこなっていただいております。県ではこのように現場と直結している保健所などの出先機関が行政のサービスをこうじょうさせ、事務の効率化を図ると言う観点が必要でございまして、所属間連絡、連携などをおこないやすい体制とするための組織の再編整備をおこなってまいりました。その方向でございますが、庁舎管理などの総務部門は統合することにより効率化を図る、限られたマンパワーを直接住民サービスの充実に対応して、現場対応力を高めるという方向でございます。
広範、多岐で専門性が高い仕事でございます。また、仕事の忙しい時と暇な時がある特徴のある職場でございます。効率性を維持するには工夫がいるわけでございますので、限られた勢力の集中と機動力を増すという方向での組織改正をおこなってきております。その一環といたしまして平成27年には葛城保健所と桜井保健所を統合して、中和保健所といたしました。職員数は統合前の両保健所の合計数と統合後の中和保健所を比較いたしますと5名減少しています。主に総務に関連する事務部門を統合によりできたものでございます。一方、業務の中核を担う保健師の定員は、統合前の25名を統合後も維持し、また、一か所に集約することによって、スケールメリットを活かして忙しい時と暇なときの調整を可能とすることもできるようになりました。
今回の感染症対応など一刻を争い対応が必要についても、その機動力が活かせたと思っております。中和保健所は規模の大きな保健所になりますが、そのメリットを活かして保健所内での人員のやりくり、他の保健所への人的応援など機動的に対応をするとともに、育成を通じて機能を高める結果をもたらしてくれております。また、コロナ対応が典型的でございますが、その感染状況により一時に、非常に業務が集中することがあります。業務の頻時、閑時の状況に応じて職員を調整できる民間保健師も活用しております。中和保健所、郡山保健所において6名の民間保健師が相談対応、疫学調査などの業務をおこなってきております。
大変、波のある仕事でございますので、その調整ということに工夫がいるように思ってきております。こうした感染症への組織的対応に置きましては実際におこって事例を教訓として、事例を今後の組織の教訓に活かすことが非常に重要だと思っております。
今回のコロナ対応におきましても平成14年のサーズや平成21年の新型インフルエンザにおける事業のいろんな経験が大いに役立ったと聞いております。今回のたたかいで培った経験も、今後の保健所運営にしっかり役立てるための組織ノウハウとして着実に引き継いでいけるよう、工夫を凝らしていきたいと思います。
今後とも組織マネジメントの強化と保健所をはじめとする専門人材の確保、育成により保健所の総合力を高めて、あわせて県の保健所間の横の連絡はもとより、奈良市保健所との連携や市町村との連携も強化してまいりたいと思いますが、県の保健所が奈良の保健所業務の中核でございますので、今回のコロナを期に県の保健所の組織・機能についても落ち着いたら、点検をしたいと思っております。
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荒井正吾知事答弁 吉野保健所と内吉野保健所の統合、機能・体制はどうなるのかというご質問でございます。吉野保健所と内吉野保健所の現在の役割分担は、下市町にございます吉野保健所が総務部門を含めほぼすべての保健所業務を担っている実情でございます。一方、五條市に所在する内吉野保健所は多岐にわたる保健所業務の内、主に薬剤師や獣医師が担っておられます食品衛生、生活衛生、獣疫衛生と保健師がになう業務の内、感染症業務につきまして五條市、野迫川村、十津川村の1市2村を管轄エリアとして受け持つ体制になっております。
下市の保健所分担は多く、五條の保健所の分担は少ないという状況でございます。今回、両保健所を統合し、主として保健師が担っている感染症業務は下市町にある保健所に集約することとして、現在、五條市にある内吉野保健所は令和3年12月に新設される五條市と県との合同庁舎に移しまして、現在五條市にある内吉野保健所が担っていただいております五條市、野迫川村、十津川村の3市村における食品衛生、生活衛生、獣疫衛生業務を残すことにいたしました。名称も内吉野保健所から吉野保健所出張所とする予定でございます。
この統合は保健師を下市町の吉野保健所に集約することにより機能的な運営をおこない、現場対応力をさらに高めていくという従来の組織運営の方針に従っているものでございます。
また、県では南和地域の高齢者の健康、医療、介護など生活全般にわたって包括的に相談をおこなうことが必要でございます。とりわけ一時接触者と申しますご家庭に訪問してお話を聞く一時接触者が重要でございます。奈良県版ダイホイターの活動と呼ばれるような一時接触者を動員いたしまして、南和地域のなかで県と市町村が連携して、福祉を総合的におこなう福祉の奈良モデルの検討をすすめようとしておりますが、統合される吉野保健所では保健師を集約することで従来の担当分野別ではなく、地区担当としてこのような総合福祉業務を担うことが可能となるというふうに思っております。集約化して機動力を発揮したメリットを活かして南和地域での福祉の奈良モデルの実践をおこなっていきたいと考えているところでございます。
小林照代議員再質問 私は、コロナ禍のなかで保健所の現状が大変になっているということで、特に保健師さんの残業時間も多くなって、職員全体だそうですけど、そうなっているなかで、人材不足という事が非常に、今、課題だと思います。それが体制強化で一番求められていると思います。
知事のご答弁は効率化を図るということで、管理の面でご答弁いただいたわけですが、国の方でも、この問題では人材不足という事が、体制強化で増員、特に保健師さんについては増員が必要だという事を認めて、2021年度予算では全国で2万9000人増を見込んで財政措置がされている。都道府県お標準団体ベースで170万人です。それでいきますと6人ぐらいの増となりますけど、それでいきましても、やはり保健師さんの増員は必要だと思いますけれども、その点についてはどうでしょうか。その他の、国の方では薬剤師等の職員や事務職員の役割も重要という事で、標準ベースで2人は増やす財政措置をするということにはなっているんですけれども、保健師さんを増やすという事について、知事はどのようにお考えでしょうか。
荒井正吾知事答弁 保健師さんはたいへん重要な役割であります。全体として県の保健業務は市町村に移っていく中で保健師さんが市町村職員にうつっていって、ばらばらになってしまったという経緯があるように思っています。その結果、市町村でも保健師さんがなかなか採用できないというような事情が発生しています。県と市町村で合同で保健師の採用をしようといったような事情にあります。
コロナ対策で保健師さんが頑張ってきていただいておりますので、国の方で保健師を増やすための下支えをしようという動きがございます。それも活用出来たら良いと。だから、現場で保健師さんがなかなか集まらないということと、財政支援が出始めたという新しい事情が2つあるということでございます。さらに、保健師さんの業務は多様で、きわめて重要な役割がありますけれども、新しい仕事があるという3つのことを認識しております。
そういたしますと保健師さんを大事に育てて、保健師さんを確保するということになってくると思います。どのように確保するのか。定員になれば増員という事になりますけれども、どのように業務の分担をするのかということになります。大事な仕事であることは認識しておりますが、とにかく人が増えればよいということだけのことではないと思います。保健師業務というのを点検したいと思っています。その機能と役割、配置などについても、せっかくご質問もございましたので、点検をしたいと。その点検の指示はすでにだしておりますので、私の答弁にも反映されているのでございますが、その結果、そのような分野での増員といいますか、戦力強化が必要なのかということもよく考えていきたいと。保健師業務は多様でございますので、どこに力を入れていくのかということは、奈良県の健康であるとか、衛生であるとか、いろんな分野に関係があります。これまでの経験をどのようなところが浴しているのか、よく調べをして今後の保健業務の充実ということで考えていきたいと思っております。
小林照代議員 保健師さんの増員はぜひ、していただきたいと思います。コロナ禍のもとで大変、業務が多忙になっているというのはよくお分かりのことだと思います。
もう1つですが、その他の職員です。実は、中和保健所になって遠くになって、精神障害の方から、保健所に行く時間が取れないうえに保健所で相談員の方の兼務が多くて、相談をうけてもらえる方が少ないということで、何とか専門の相談員さんを増やしてほしいという要望が届いています。
そういう意味で、相談のところを。内吉野を吉野にして、相談業務をおくということかと思いますけれども、市町村との連携ということも言われました。地町村との連携や事業所、それから保険と医療の連携のつなぎ役を精神保健相談員の方はされていると思います。その部門の人もなんとか、増やしてほしい。ここも相談窓口をつくってくださるということについては歓迎しますが、そのように思います。精神保健相談員を増やすという事については、どのようにお考えでしょうか。
荒井正吾知事答弁 保険の現場の仕事は専門性が高いことは必要ですが、専門性の高さ、低さがわかれてしまいます。ある精神保健の専門家がいきますと、私のこまっているのはそれではないと。いわれるとその人ではない人が必要になる。その都度、行くのは大変です。ある程度、総括的に話を聞ける人というのは、先ほど言いましたが、ロギホイターというフィンランドの制度がありますが、なんでも聞ける人、一時接触者と言っております。
専門性が高く、その場で何でも対応できることでなくても良いです、そこで聞いて、バックヤードに持って帰って専門性のある人と合同会議して、この場合にはこれとこれの専門性のある人が必要と、こういう仕組みを、日本にないんですが、こういう仕組みを、ご家庭と離れているところでつくろうかというのが福祉の奈良モデルということでございます。そのような中で保健師さんというのも、何でもできる保健師さん、看護師もできるしというしくみを県でつくれないかということに考えております。専門性のある人がたくさんいても、行くたびにあんた違う、あんたと違うということになっても非効率でありますので、何でも聞ける、聞いたことをタブレットに入れて電送する、バックヤードの専門性のある方がいる同号会議でケアマネジメントの会議が大事です。一時接触者とバックヤードの会議、縦と横の会議で南和の福祉を維持し、構築させていきたいという考えでございます。単なる増員とは違う。増員は居ると思いますが、その仕組みを、体制強化を図っていきたいと思っております。
小林照代議員 厚生労働省では、地域で暮らしている精神障害者の支援のあり方を検討していた有識者検討会が市町村に対して、医療や福祉、住まいなどの分野への支援体制を強めるということで、現在精神障害者を支援している保健所の役割を、分担して連携を求めているんです。それが、知事がおっしゃった連携ということです。地域包括ケア体制ということをめざすとおっしゃっていましたが、今、実際に保健所で保健師さんといっしょになって、医療と保険と福祉をつなぐ、地域をつなぎ家族をつなぎ、支援事業所をつなぐ役割を、地域包括ケア体制の体制づくりに、精神福祉士、相談員の方は中心になっていると思います。
そういう意味で担当されるこの部分をぜひ増やしていただきたいなと思います。
2 子どもの貧困対策について
小林照代議員 次に、子どもの貧困についておたずねします。
内閣府は、「1日3回食事ができているか」「家に学習用の机と椅子があるか」「病気の時に病院にいっているか」など、こどもの貧困の現実にしぼった生活の充足度直接確認する「剥奪指標」を用いた実態把握の全国調査を検討しています。コロナ禍のなかで、長期休暇・夏休みなどで貧困状態にある子どもたちには、「食のセーフティネット」からも落ちこぼれている現実があります。「給食費が払えない」子どももいます。貧困状態にあるこどもにとって「毎日お昼だけでも給食をとる」ことは本当に大切なことです。食生活の貧困は、朝ご飯を食べないなどといった生活習慣の乱れにもつながり、不登校になる子もでてきます。こうした子どもたちは、学ぶ機会を失い、人生のはじめの段階(こども期)において希望を奪われやすいのです。
1985年から継続的に把握されてきた厚労省の国民生活基礎調査の「こどもの貧困率」をみると2015年でこどものいる現役世帯の貧困率12,9%に対し、ひとり親世帯の貧困率は50、8%と高くなっています。
日本共産党奈良市議会議員団が昨年9月から12月に行った「暮らしのアンケート」にも、パートなど非正規雇用で働くシングルマザーから「仕事が減り、ボーナスもなくなった。」「来月から来なくていいといわれた。子どもだけは守りたい」と切実な声も寄せられました。賃金という生活の「土台」のところがコロナ禍のもとで一層、貧困化しているのです。
こどもの貧困には親の貧困が背景に横たわっています。2019年6月改正された「子ども貧困対策推進法」では、「子どもの貧困対策計画」が市町村の努力義務とされました。奈良県では、現在、子どもの貧困対策及びひとり親家庭等自立促進に関する計画づくりがすすめられています。その計画づくりにあたっては、子どもの貧困の実態をあらゆる角度から調査をして現状把握を行う必要があります。また、子どもの貧困の背景には親の貧困があることから、それに対する取り組みが必要だと考えます。
こども・女性局長におたずねします。奈良県の子どもの貧困の実態をどのように把握しているのでしょうか。また、実態把握を踏まえ、シングルマザーへの支援について、今後どのように取り組んでいくのでしょうか。また、子どもの貧困対策の一環として、地域の住民が主体となって無料や低料金で子どもに食事を提供する、子ども食堂への支援を充実していく必要があると考えますが、今後どのように取り組んでいくのでしょうか。
金剛こども・女性局長答弁 子どもの貧困は、親が貧困状態にあるため子どもの健やかな育ちが損なわれる、家庭がかかえる問題であり、子育て、就労、教育等の分野で多様な主体がかかわり、包括的に取組をすすめるべき課題であると認識をしております。このため県では昨年度に子どもの生活に関する実態調査を実施し、特に経済的困難をかかえている家庭の実態把握につとめたところでございます。
調査の結果、母子世帯の約9割が就労しているものの、その約4割がパート、アルバイトであり、年収が200万円未満という現状です。また、約半数が養育費の取り決めをしていますが、そのうち全額を支払われているのは約半数にとどまっています。しかし、母子世帯の母の約8割が支援をうけずに自立したい、または支援を受けながら頑張りたいと回答されており、自立への高い意識がうかがわれます。このため一人親の学びなおしによるスキル所得支援や企業によるトライヤル雇用等により安定的に就労を継続し、子育てと両立できるよう奈良労働局や就労支援機関との連携を強化したいと考えています。
また、一人親の就業、生活を総合的に支援している奈良県スマイルセンターにおいて、今後は養育費や面会交流の相談等離婚前から対応するなど一人親家庭の子どもの権利擁護の観点を重視した取り組みに力を入れたいと考えています。県では一人親家庭が地域で孤立することなく、あたたかな支援に包まれて自立した生活ができるよう、社会福祉協議会や包括連携協定の締結企業、子ども食堂活動をおこなっているNPO等に働きかけ、多様な主体による一人親家庭への支援の充実に努めていります。
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金剛ども・女性局長答弁 子ども食堂はこどもの貧困対策として食事を提供するだけではなく、親子が地域の人とつながる居場所であり、地域の人々による子育て支援活動の1つです。現在、子ども食堂は県内48の小学校区で設置されていますが、県では令和6年度までに191の小学校区すべてに設置されることをめざしています。これまで県子ども食堂コーディネーターによる開設、運営のための相談対応や企業の応援、協力を拡大することにより、子ども食堂の安定的な運営等を支援してきたところでございます。
今後の子ども食堂への支援については、一人親家庭等生活に困難を変えている家庭を支える地域の拠点としての役割も担えるよう、子ども食堂の多機能化に取り組んでいきたいと考えています。具体的には来年度、地域の人やNPO、企業等が子ども食堂の活動に参画し、子育て相談に繋げたり、子どもの見守り活動を実施できるよう、支援いたします。また、子ども食堂が内部協力者のサポートを得て、地域に根付いた活動をして継続できるよう、こども食堂に安定的に食品が届くよう、フードバンク活動団体等と連携してすすめてまいります。
小林照代議員 子ども食堂がすべての小学校区に必要だと思います。それで今、お聞きしましたが191校のうち48校ではできているということですが、開設、運営のための財政的支援が必要だと思います。予算の中では奈良子ども食堂サポート事業の予算350万円ではあまりにも少なすぎますので、この拡充を求めておきたいと思います。
3 生活保護について
小林照代議員 次に生活保護についてお伺いします。新型コロナの感染拡大で解雇や雇止めに遭う人ひとが増大し、コロナ鬱、自殺など社会的に弱い立場の人ほど、コロナ禍のしわ寄せをより多くうけます。自治体は生活困窮者への支援を強化する必要があり、困窮の状態によっては生活保護制度がもっと活用されるべきです。
厚生労働省の2016年の推計では、全国の生活保護の対象となる低所得者のうち、生活保護利用世帯は2割程度にとどまっており諸外国と比較でも日本の捕捉率の低さは群を抜いています。このように低い捕捉率は日本では生活保護がその機能を十分発揮していない状況にあることを示しています。
なぜこのような状況になっているのでしょうか。生活保護の申請をめぐっては、これまで自治体の後ろ向きの姿勢が当事者・支援者から厳しく指摘されています。全国的には、福祉事務所の現場において、生活保護の申請・利用を制限しょうとする「水際作戦」や申請後に保護の辞退を強要する「硫黄島作戦」と言われる行為があったと聞いています。その口実には、まず親族や別れた夫に扶養を求めたうえで保護を申請しなさいとかまだ若いのだから探せば仕事が見つかるはずだ、もっと就労の努力をしなさいということが使われることが多く、ホームレスのひとには「家を見つけてから来なさい」と申請が受け付けられません。こうして2000年代に入ってからも全国各地で餓死・自殺・孤独死・心中事件が起こりました。
私はやむやまれぬ思いでこれまで幾人ものホームレス・障害者・高齢者の保護申請に同行していますが、ホームレスの人の申請を受け付けてもらうために福祉事務所に行く前に必死の思いで「家」を確保に走り回りました。ときには、住宅扶助基準に合う家がなかなか見つからず、途方に暮れたことも幾度かありました。2012年には、ある芸能人の母親が生活保護を受給しているとの報道をきっかけに「生活保護バッシング」が一気に広がりました。
この件では、当該芸能人はできる範囲で母親に仕送りもしていましたし、生活保護制度は、仕送りがされた範囲内で、収入として認定し保護費を削るという制度ですから、不正受給でも何でもないケースでした。ところが、国会で一部議員が、不正受給だと主張し、騒ぎ立て、「生活保護、不正受給が蔓延している」とか「生活保護を受けることを恥だと思わなくなった」といった発言が繰り返されました。現実には、不正受給は、蔓延しているという事実はありませんでした。また、貧困に陥ったとき、生活保護を利用することは、憲法25条に基づく権利であり「恥だと思う」必要は全くありません。奈良県でも不正受給が多いとの議論がありますが、過去、生活保護問題対策全国会議が全国の「不正受給」の事例、パターンを分析した記録を見ますと、ケースワーカーが不足し、調査が行き届かなかった、ケースワーカーが解決策をしらなかった。法による処理がされていなかつたなどが浮き彫りになっています。これは、ケースワーカーが十分に被保護者に寄り添えていなかったということではないでしょうか。
私の関わった40代のシングルマザーの女性は、精神疾患があるため、ワーカーとのコミュニケーションに障害があり、がんばってアルバイトした報告が遅くなったことで、収入を隠したと保護を打ち切られました。「家賃が払えない。子どもに食べさせるものがない」と、泣いて電話がかかってきました。このように、困難な事情がある場合であっても、生活保護が受けられなくなる人が出てくることは避けなければなりません。これまでもケースワーカーの人材不足が繰り返し指摘されてきました。
福祉医療部長におたずねします。困難な事情のある利用者にも丁寧に対応できるよう、福祉事務所にはケースワーカーの十分な配置が必要と考えますが、県内の現状はどうなっているのでしょうか。また、今後どのように取り組んでいくのでしょうか。コロナ禍のなかで、生活保護の利用を必要とする人がひろがっています。今国会で菅首相は、「コロナ禍で困窮する人は、最終的には、生活保護がある」と答弁されました。しかし、生活保護の申請に際し、親族に援助ができるかどうか問い合わせる「扶養照会」という手続きがあることが、生活保護を利用すべき人が「親戚に知られたくない」という理由であきらめる元凶の一つになっています。この扶養照会をやめるよう求めた今国会の参議院予算委員会での日本共産党の小池晃委員の質問に、田村厚生労働大臣は「扶養照会は義務ではない」と明言しました。本人の意向に沿わない扶養照会は、現場においてされてはならないことだと考えます。
福祉医療部長にお尋ねいたします。本人の意向に沿わない扶養照会は、生活保護の申請をためらわせる要因になると考えますが、奈良県では、扶養照会をどのように行っているのでしょうか。昨年の6月国会で、安倍前総理は、生活保護を権利と認め、「ためらわず申請してほしい」と答え、この答弁を受け厚労省は「生活保護の申請は国民の権利です」と書いたリーフを作成しました。厚生労働大臣は、「生活保護の申請は国民の権利」と呼びかけました。
福祉医療部長にお尋ねいたします。利用者がためらわずに申請を行うことができるよう、奈良県の「生活保護のしおり」に、「生活保護の申請は国民の権利です」との旨を明確に記載すべきと考えますが、いかがでしょうか。
西川福祉・医療部長答弁 生活保護関して3点のご質問をいただきました。まず1点目。困難な事情のある利用者にも丁寧な対応をするためのケースワーカーの配置についてでございます。社会福祉法にもとづき、本県では12の市、十津川村およびその他の郡部を管轄する県に2箇所の、計14箇所の福祉事務所が設置されております。また、ケースワーカーの定数につきましても社会福祉法において標準数が定められています。
県では毎年度生活保護法にもとづく事務監査の際にケースワーカーの配置状況を確認しており、令和2年度では県の中和福祉事務所を含む4つの福祉事務所において標準数に満たない配置を認められました。事務監査においてはケースワーカーの配置状況だけではなく、ワーカー一人当たりの担当件数や個別ケースの対応状況等を詳細に確認しております。福祉事務所が組織として生活保護制度の趣旨にのっとった適正な運営がなされるよう引き続き、各福祉事務所を丁寧に指導することにより、利用者それぞれの困難な事情によりそった支援を適切に行うことができるよう努めてまいります。なお、県の管轄でございます中和福祉事務所は令和3年度に向けてケースワーカー2名の定数増を図ったところでございます。
また、国の第3次補正予算を活用して新型コロナウイルス感染症拡大の影響による事務量の増大に対応するため、県の中和および吉野の両福祉事務所に事務補助職員を配置するための補正予算案を今議会に上程しているところです。
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2点目は生活保護の申請にあたっての扶養紹介についてでございます。生活保護法では民法上の扶養義務の履行を期待できる扶養義務者のあるときは、その扶養を保護に優先させることとされています。このため、生活保護の申請があった場合、本人からの申告や戸籍謄本等により不要義務者の存在を把握します。次に申請者本人への聞き取り等により不要義務の履行の可能性について確認します。その際には申請者と扶養義務者との間に扶養義務の履行が期待出来ないような特別な事情がないか等を慎重に確認いたします。これらの確認により扶養義務の確認が期待できると判断した場合は、当該扶養義務者に対して特別扶養紹介をすることになります。
今、申し上げました取り扱いは生活保護法の処理基準として厚生労働省から通知されており、県では毎年度、生活保護法にもとづく事務監査の際に各福祉事務所において扶養紹介が適正に運営されていることを丁寧に確認しているところでございます。
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3点目は利用したい方がためらわずに申請がおこなわれるような制度の周知についてでございます。県で作成しております生活保護のしおりは、1つは申請の意思を示した人に対して生活保護制度の説明をする場合、また、生活保護の需給が決定した方に対しまして生活保護制度における権利や義務について説明する場合、さらに生活保護受給中の方に対して改めて権利や義務について説明をする場合に活用することを念頭に作成しているものでございます。一方で、議員お述べのような申請の前段階の方などへの呼びかけにつきましては県のホームページに掲載しています生活保護制度を紹介するページの冒頭部分でおこなっております。
生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください。というメッセージを積極的に発信しているところでございます。
小林照代議員 先ほどからケースワーカーの充足について、増やしてきているとのお答えをいただきましたが、福祉事務所でワーカーが不足する中で、雇用形態が非正規になっているところが多いのです。だから、ワーカー自信の生活が不安定な中で利用者の支援ができるかなと思います。それでワーカーの専門性の確保、向上には安定した雇用の確保と専門職の確保が求められますが、これについては現状からみて、どのように取り組んでいかれるのでしょうか。お聞きします。
西川福祉・医療部長答弁 ケースワーカーの量と質の確保の観点だとおもいますが、量につきましては先ほどご答弁申し上げました。各事務所全体で、それぞれケースワーカーについて、できだけ仕事を丁寧にやっていただけるよう研修、あるいはその職場環境の充実などを通じて、生活保護事務が円滑にいくように努めていきたいと考えております。
小林照代議員 ぜひ、この雇用形態の点でもしっかりと取り組みをしていただきたいなとおもいます。今も、奈良県では生活保護世帯が1万4000世帯あり、1万9000人ほどの方が受けておられます。全国的な平均の捕捉率でいいますと、2割ですから、必要としている方々は約7万6000人ぐらいになるかなと思います。そういう人たちにも、受けられるように制度、そして陣容の改善にぜひ頑張っていただきたいと思います。
4 コロナ禍を踏まえた住宅困窮者への支援について
小林照代議員 次に、コロナ禍を踏まえた住宅困窮者への支援についてお伺いします。厚生労働省は今年の2月26日集計の新型コロナ感染拡大に関連した解雇や雇止めは、累計で9万185人、奈良県では567人と発表しています。深刻なのは、ネットカフェの休業で住む場所を失った人々です。また、家はあるが、減収で家賃が払えない人も急増しました。自粛に伴い「ステイホーム」と言われても「家」を持たない人々にとって無意味な言葉です。そもそも家がない状態が放置されてきたことが問題であり、また、家があっても過密で不衛生な住宅や施設や宿泊所ではかえって新型コロナウイルスの感染の脅威にさらされます。コロナ禍は、第1に住宅を失った人々の絶望的状況と、第2に自然災害のように直接住宅を奪うのではなく、休業や失業により収入が減り家賃が払えず住宅を失う問題と、第3に低質住宅居住問題をあぶりだしました。
「持ち家」政策が中心となってきた日本では、「住まい」は自己責任論が強く働き、仕事の問題や介護や医療など他の生活課題に隠されてしまいがちです。しかし、住宅は人間が生きていく上で不可欠なものです。「住まいは人権」であり、住まいがなければ、生活保護も利用できません。国は2008年のリーマンショックの時の経験から、「コロナ感染拡大による収入減少者向けに一時的に公営住宅を提供する道をつくりました。
奈良県においては、県と市町村によって46戸の公営住宅が提供されましたが、県営住宅ではその利用が最長1年間でした。どれだけの人が、1年間で安定した仕事や住まいを見つけることができるか疑問です。さらにこの状況が長期化することも予想されるため、今後提供戸数の増加が必要と考えます。また、家賃助成としては「住居確保給付金」の給付が行われていますが、このような家賃助成を国の予算で行われることは画期的であり、奈良県では昨年4月から7月までで申請が876世帯にのぼりました。こうした家賃に対する助成制度は非常に効果があるものと考えます。今後も広く住宅施策としても続けていく必要があるのではないでしょうか。
また、コロナ禍などの緊急事態に陥ったときに生じる住宅危機に対しては、平時の住宅政策がどうあったかが問われてくると考えます。
地域デザイン推進局長にお尋ねいたします。奈良県の住宅政策の基礎となる奈良県住生活基本計画に、住宅困窮者に対する居住支援についての取組を盛り込むべきと考えますが、いかがでしょうか。また、公営住宅をより多く確保するなどの住宅困窮者への具体的な支援が必要と考えますが、いかがでしょうか。
岡野地域デザイン推進局長答弁 全国的に同様でありますが、本県でも低額所得者、高齢者、一人親世帯など賃貸住宅入居に配慮を要する方が増加する傾向にございます。つまりは、生活のもっとも重要な基盤であることから、このような方々に対する支援は重要と認識しております。
このため平成28年には県、市町村の住宅及び福祉部局のほか、民間の不動産関連団体や社会福祉法人等で構成する奈良県居住支援協議会を設立し、関係者が連携した相談体制の整備など住宅に困窮されている方への支援の取組をすすめているところでございます。来年度、令和3年度に改訂予定の議員ご指摘の奈良県住生活基本計画におきましても、県民のみなさまが住まいを確実に確保できるよう、計画の柱の1つとして居住支援の強化を位置付けたいと考えております。
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2点目でございます。公営住宅の確保など住宅困窮者への具体的な支援についてでございます。県ではこれまでも住宅セイフティネットの核として県営住宅を供給してまいりました。昨今のコロナ禍に起因する離職等により住宅を失われた方に対しても一時的に県営住宅の空き住戸を提供しており、収入の状況などにより引き続き入居することも可能となっているところでございます。議員お述べのとおり、住居確保給付金の給付がおこなわれておりますが、定められた給付期限が到来いたしますと、今後、住宅に困窮される方が増加する可能性がありますので、社会経済情勢の変化を見ながら、提供可能な空き住戸を追加することも検討してまいりたいと考えております。
また、コロナ禍の影響を受け、住宅に困窮される方については、住まいの確保に加え、入居後の生活支援も重要でございます。このため、奈良県居住支援協議会等を通じ、関係者で情報共有を図り、連携して支援していきたいと考えております。
小林照代議員再質問 住宅の問題です。緊急時には公営住宅をより多く確保する、そのためにも日頃不足している公営住宅そのものを増やすことが求められると思いますし、家賃が払えない人には家賃の補助制度が必要だと思います。これは意見として申し上げておきます。
(了)