2021年6月議会
一般質問
2021・6・28 太田 敦議員の質問
*議会の音声資料から作成したもので公式の会議録ではありません
日本共産党奈良県会議員団
4 平群町のメガソーラー開発計画について
太田 敦議員 平群町の櫟原地内におきまして、甲子園球場12個分、48ヘクタールもの土地に5万2758枚もの太陽光パネルを設置する工事が、現在進められています。住民は、事業者による大規模自然破壊であり、美しい自然が害されるだけでなく、災害を誘発させ、周辺住民らの生命、身体を危険にさらすことになるとメガソーラー開発工事の差し止めを求めて訴訟が起こっています。
この場所は、平群町の緑ケ丘、椿台、若葉台合わせて2000世帯の住宅のすぐ上手に当たる風光明媚な森林です。住宅地の間を櫟原川、大釜川という二つの川が流れておりますが、大変小さな川で流水量も小さく、開発で森林が減ると、山の保水力が減って水害が心配だという声が当初からあがっていました。
このような中、事業者により、開発事業の変更計画が県に提出されました。排水路の変更です。
対象地域である椿台住宅地から計画地までは直線距離にして900㍍程度で高低差150㍍、平均の勾配が17%もあり、事業者の申請書類では排水路の標準的な流速基準である毎秒3mをはるかに超過する毎秒10㍍超の土石流が想定されるような流速で計算されています。住宅地へは1分足らずで濁流水が到達することになり、災害発生時には避難することも難しい状況が想定されます。
今年4月13日には平群町長名にて、知事あてに「林地開発許可申請に対する意見書」が提出され、「新たな放流先となる下流域にある周辺住民等へ説明会を開催し、周辺住民等の理解を得るように事業者への指導」を要請されました。また、4月16日には県水循環・森林・景観環境部、森と人との共生推進課長あてに「林地開発許可申請に対する要望書」が出されました。
地元自治会においても、未だに事業者である協栄ソーラーステーション合同会社から説明会の開催の連絡、相談がなく、一方で計画地では休みなく工事が進められてきました。
先日の猪奥議員の代表質問に対する答弁では、現在停止しているとのことですが、重要な計画変更でありながら住民の意見聴取もせずに工事が進行していたことに多くの住民は不安を抱いています。
開発申請書類では実際の水路勾配と全く違う急こう配で計算され、流下能力に問題がないとされていますが、実際の勾配で計算を修正すると県基準の流量が確保できないことが、専門家からも指摘されています。
そこで水循環・森林・景観環境部長に質問します。
(1) 防災調整池の排出先を変更するための変更申請に際し、地元住民への説明がなかったと聞いています。地元住民への事前協議が必要であったと考えるがいかがでしょうか。
(2) 変更申請にあたっては、水害防止要件を満たす必要があるが、近隣地域では大雨の度に水があふれる状況と聞いています。県では水害防止のために、どのような指導をしているのかお答えください。
塩見水循環・森林・景観環境部長答弁 令和元年に林野庁に設置された太陽光発電にかかる林地開発許可基準の在り方に関する検討会の報告をうけて、国の開発行為の許可基準の運用細則が一部改正されました。その中で、住民説明会の実施等について防災や景観の観点から、地域住民が懸念する事例があることから、申請者は林地開発許可の申請の前に住民説明会の実施等、地域住民の理解を得るための取り組みを実施することが望ましいと明記されています。これを受けまして県が定める林地開発許可制度の手引きを令和2年4月に改正し、事業者に対して説明会等を実施して地域住民の理解を得るよう指導しています。
事業者からは昨年9月から今年3月までの間に関係自治会に対して説明会を開催したと聞いております。
許可申請にあたっては、水害防止要件を満たす必要があるが、県では水害防止のためにどのような指導をしているのかとのお尋ねでございます。
林地開発許可にあたっては森林法第10条の2、第2項に土砂の流出または土砂崩壊、その他の災害や水害を発生させるおそれがないことを確認することが許可条件の1つとなっています。このうち、水害を防止するために設置される防災調整池については国の開発行為の許可基準の運用細則において基準が定められています。これに基づき県では、林地開発許可制度の手引きや調整池技術基準により、適正な防災調整池が計画されているかを審査しています。
具体には、市街化調整区域においては50年、その他の地域においては30年に1度発生する可能性のある大雨を想定し、その場合であっても開発区域から流出する水量を開発前の水量にまで調節することが出来ることを確認しています。
今回、平群町の開発計画においては当初申請の内容と現地の状況が異なっていることが判明しており、防災調整池の設計内容について再確認するよう事業者に指示しております。
太田 敦議員 住民の事前協議について、事業者の林地開発の許可申請に対して町長は県から意見を求められて4月の13日付で林地開発の許可申請において新たな放流先となる流路の下流域にある周辺住民への説明会を開催し、周辺住民への理解を得るように事業者の指導をお願いしますという意見書を、わざわざ県から聞いて、それに答えたのがこの回答だったと私は理解していますが、この流れからすると、この要望を受けて、要望通りに説明会を開催するべきだと思いますが、いかがでしょうか。
塩見水循環・森林・景観環境部長答弁 先ほどご答弁さしていただきましたとおり、昨年9月から今年3月までの間に、関係7自治会に対しまして8回、説明会を開催したと聞いております。
太田 敦議員 私、言っているのは変更申請に対して森林法に基づいて、県が平群町に意見を訪ねておられます。それに対しての回答が、対象の地域で説明会を開いてくださいよという意見が出されたということですから、当然、県が聞いたことに町が答えている訳ですから、これに基づいて対応が必要だと思いますけれども、それはいかがですか。
塩見水循環・森林・景観環境部長答弁 林地開発許可の申請前に住民説明会の実施等を、地域住民の理解を得るための取組を実施することが望ましいということになっていますので、事業から確認したところ、昨年9月から今年3月までの間に、関係自治会に説明したと聞いております。
太田 敦議員 そしたらこの意見書は、現在、どういう取り扱いをされているのか。地元からはしてほしいとおっしゃっていますが、いかがですか。
塩見水循環・森林・景観環境部長答弁 平群町から確認をしてほしいと、太陽光発電にかかる開発の基準の関係で水路の勾配と実際の申請書の中身が違うということで、その中身を確認してほしいということがございましたので、それを確認して、申請書の中身と現地との誤りがあるという事を確認したということです。
太田 敦議員 私は地元の方が、説明会を開催して周辺住民の理解を得るように事業者への指導をお願いしますという、町からの。これは県から尋ねて町が答えたことです。この問題は町からすると棚ざらしにされているような状況になっていると思いますので、適正な対応を求めておきたいと思います。
それから、工事は森林審議会の林地開発部会におきまして審議されて、許可されているということでございますが、防災調整池について今後、設計の変更が生じる場合は審議会の審議を得るという事が不可欠だと思いますけれども、それについての考えをお聞かせください。
塩見水循環・森林・景観環境部長答弁 平群町の太陽光発電施設の林地開発許可にあたりましては、奈良県森林審議会林地開発部会の審議を経て許可をしております。今回、防災調整池の規模算出の根拠となる開発区域の下流側の流路の勾配が、当初申請の内容と現地の状況が異なっているということが判明しており、防災調整池の設計内容について再確認するよう事業者に指示をしております。その結果、防災調整池の規模、形状等が変更となる場合は改めて森林審議会を諮問して、審議を行って頂く必要があると考えております。
太田 敦議員 今回、猪奥議員からも、この勾配が18%ということで、数字がすべて並んでいるということで不可解であるということでありました。勾配が18%というのは基準をクリアするための数字であったということです。同じ大きさの水路でも勾配が大きくなれば流れが速くなって、流れる量が大きくなる、この分野に詳しい人が、勾配と係数をもう一度再計算しましたら、観測地点の15か所のうちの9か所で基準を満たさないという結果であったということをお聞きをしています。
今回の許可申請におきましては、開発行為、監督処分の対象となるいつわりその他不正な手段によって許可を受けて開発行為をおこなった場合に該当すると思いますけれども、いかがでしょうか。
塩見水循環・森林・景観環境部長答弁 今回の許可申請において防災調整池の規模等設計するうえで必要な数値に誤りがあったということについて森林法第10条の3で規定されているいつわり、その他不正な手段により許可を受けて開発行為をしたものにあたるとして調査をしているところです。県としましては現場の安全確保を第一に、事業者に対して県が工事計画の内容が適正であると認めるまで、工事を停止すること、また、工事を再開できるとしても先行して防災調整池の工事を終えるまでは全体の造成工事に着手することを認めないことを文書で通知したところでございます。
太田 敦議員 この流下能力の算定の偽装と言っても良いと思いますけれども、これは本当に人命にかかわる重大な問題だと私は認識をしております。該当する流域の住民の生命、財産の保全にとってもきわめて危険な災害が発生することも想定されると、私は言えると思います。
これからまた、雨が降ってまいります。雨が降るために水路が、濁流が流れて農地に泥が入る、こんな苦情もお聞きをしているところでございます。現在、工事はとまっておりますけれども、緊急の防災対策をとっていただくことを、強く求めまして、私の質問を終わらせていただきます。
(了)