こんにちは。奈良県議会議員団[奈良県議団]です。

[2010.9.22] -[政策]

奈良県林業の再生と活性化にむけてのさしあたっての提言

 日本共産党奈良県会議員団は、奈良県林業の諸指標、林業従事者など林業関係者との懇談、林業を基幹産業とする町村関係者との懇談などを通じて、奈良県林業の再生と活性化にむけてのさしあたっっての提言をまとめました。

 この提言が(案)としているのは、引き続き、読んでいただいた方のご意見、提言をいただいて、さらに充実、正確にしていくことが予定されているためです。ぜひ、ご意見をお寄せください。

 なお、提言の発表にあわせて、6月13日、大淀町で「奈良県林業の再生と活性化を考える」シンポジウムを開催、約80人の方々と林業の再生と活性化にむけて活発に意見交換と議論をおこないました。

 提言の全文は以下のとおり。

 

奈良県林業の再生と活性化に向けて

さしあたっての提言(案)

                                                          2010年6月13日
                                                      日本共産党奈良県委員会
                                                        日本共産党奈良県会議員団

 はじめに

 日本共産党は、今年1月に開いた第25回党大会決議で、「林業を、地域経済と低炭素社会実現に不可欠な産業として位置づけ、外材依存政策を転換し、国産材の利用拡大と森林の整備をすすめ、林業・木材産業を再生させる」ことを掲げました。
 また、日本共産党奈良県委員会は、2001年2月26日、奈良県林業の活性化に向けて提言を発表し、林業再生と活性化は国政、県政の重要な課題と位置づけて、国と県の施策の充実を求めるとともに、林業活性化に向けた取り組みをすすめてきました。 
  私たちは、奈良県の重要な産業である林業と木材産業の振興と活性化は、奈良県経済の発展に欠かせないものと考えています。また、森林の保全と多様な機能の発揮を図ることも重要な課題だと認識しています。
 林業と木材産業の再生と活性化に向け、国政と地方政治を結んでさらに奮闘するものです。

  1,奈良県林業の現況と特徴

  奈良県は、県土の総面積369,109haの77%にあたる284,188haが林野であり、この内、現況森林面積が284,153haを占め、さらにその内民有林が271,035haであり、人工林面積は168,209haで人工林率は62%という森林県です。
  奈良県の森林計画は、大和・木津川森林計画区(地域面積134千ha:森林面積69千ha)、吉野森林計画区(地域面積94千ha:森林面積79千ha)、北山・十津川森林計画区(地域面積141千ha:森林面積136千ha)の3計画区に分けられています。
  奈良県全体の民有林の森林蓄積は69,056千?で、1ha当たりの蓄積は255?となっています。
 山林所有の規模からみた林家戸数は、所有山林が1ha以下の林家が32,567戸(58%)、1~5haが16,838戸(30%)、5~10haが3,574戸(6%)、10~50haが2,892戸(5%)、50ha~100haが350戸(0.6%)、100ha以上は308戸(0.5%)となっており、5ha未満の小規模林家が全体の87%を占めています。
 林業就業者も1975年には5,371名いましたが年々減少し続け、2005年には1,060人まで減少しています。林業就業者の平均年齢は1975年には48歳でしたが、2005年には平均年齢は57歳となり高齢化が進んでいます。(平成21年度奈良県林業・木材産業の概要から引用)
  県内の不在村山林所有者の割合は北海道に次いで高く、その所有森林面積は全体の49%を占めており、その中には数千haの森林を所有する大山林所有者がいます。
 県内の林業生産所得は、1975年に311億900万円ありましたが、2007年度には35億9000万円にまで落ちこんでいます。この原因は、木材価格の下落による販売収益の減少にあるとされています。
 長期的な木材価格の低落傾向が続く中で収益が見込めず、素材生産・造林・保育など林業生産活動は減退しています。このままでは再生産可能な林業活動は壊滅的な打撃を受けかねず、奈良県林業に深刻な影響を及ぼすことは明らかです。

 2,木材産業の現況

 吉野材の集積地としては、吉野町・桜井市や五條市などを中心に木材市場が開設され、また木材工業団地が形成されており、吉野材をはじめとする木材の流通の基地となっています。とりわけ吉野町と桜井市は、奈良県林業を支える木材産業の拠点となって、国産材を中心に優良材を供給しています。
 しかし、1981年の入荷量全体は1,016千?ありましたが、年々減少の一途をたどり、2007年には258千?まで減少しています。製材工場も1974年の557箇所をピークに、2007年には233箇所に減少しています。

 3,林業・木材産業の不振の原因

  県内の木材生産額は、1980年の403億3400万円をピークに減少しはじめ、1987年には増加に転じたもののその後再び下落し続け、2007年には39億円6000万円で1980年の約10分の1以下となっています。
 林業・木材産業の不振の根本原因は、木材の輸入自由化や丸太の関税撤廃などで外材輸入が急激に増加したこと(1985年から10年間で約10倍に増加)や、プレハブ住宅メーカーや大手住宅メーカーが国産材をほとんど使わないことがあげられます。費用面やエンドユーザーの好みの変化など、和風建築より洋風建築が主流となるなど住宅建築様式の劇的な変化が、国産材の需要不振に拍車をかけてきました。
 近年、木材価格の下落など長期に及ぶ林業採算性の悪化が、林業・木材産業に不振をもたらしています。
 さらに林業・木材産業の不振の根底には、長期にわたる日本経済の景気低迷にあります。格差社会の拡大にストップをかけ、国民の暮らしを豊かにする日本経済の再生と景気回復が求められます。
 
 4,吉野林業の特質

  奈良県は、吉野林業に象徴される林業県であり、林業経営は奈良県経済を支える基幹産業としての役割を担ってきました。特に吉野地方では、16世紀後半にはすでに大阪や畿内方面への木材供給地として林業経営をおこない、人工造林もいち早く手がけるなど、良質の建築用材を生産してきました。
  吉野林業は、吉野川の上流域にある川上村、東吉野村、黒滝村の3村で構成されている地域を指しています。地質は主として秩父古生層の水成岩(砂岩、粘板岩、凝灰岩、角岩及び石灰岩等を母岩)の風化した埴質壌土で燐酸加里・珪酸塩類に富み、土壌は保水と透水性が極めて良好とされています。気候も木材の生育に適している地域であり、温暖多雨の自然条件が林業経営に適した地域であるといえます。
  吉野林業の特徴のひとつには、極端な密植と弱度の間伐を数多く繰り返し、高伐期とする施業が挙げられ、主として高級建築用材の生産を目的としてきました。
 吉野材の特徴は、年輪幅が狭く(1㎝に8年輪以上)、均一で、用材としても完満通直、無節で、優れた技術と自然環境の結果、吉野材として市場で珍重されているというもので、磨き丸太の生産は京都北山の技術を取り入れ、古くから行われてきました。特に床柱材として生産される絞丸太は特産品となっています。
  吉野林業のもう一つの特徴は、大山林所有制度が支配的で、少数の村外山林所有者と零細林家との二極構造の形態となっていることです。
 近年の林業不況の影響は、吉野林業にも深刻な状況をもたらしています。吉野林業は高級建築材を生産していますが、九州などコストの安い木材を大量に搬出するものや、国有林からの低コストの木材の市場への流入などで、国内での産地間競争は厳しく、激しい価格競争にさらされています。こうしたときに速やかな林業活性化対策を講じることが求められています。

 5,林業再生に向けた振興策

 日本共産党は、山村の基幹産業である林業・木材産業を再生し、緑の環境を充実させ、山村の活性化をすすめることは国政のみならず県政の重要な仕事であると考えています。
 森林は再生産できる貴重な資源であり、国土の保全、水源の涵養、CO2の吸収など、木材生産物以外にも国民生活に欠くことのできない重要な役割を果たしています。
 木材需要の約80%を占める外材は、木材価格をも外材主導で決定させていくという状況を生みだしており、市場の木材価格は、1?当たりスギが15,500円、ヒノキが28,000円(平成20年の県産材、:スギ径24~28cm・ヒノキ径14~22cm、長さ3.6~4mの?当たりの価格)で、価格低落傾向が続いています。
 日本における木材自給率は現在約20%台ですが、2007年3月現在の森林の総蓄積量は44億?を超えており、森林全体の生長量は年間8000?と消費量に匹敵する量に達しています。したがって、木材自給率を引き上げる条件は整っています。

 国産材の需要拡大
  輸入材中心の加工・流通体制から、国産材中心の加工・流通体制に転換し、林業経営が成り立つ諸条件を整備することが急務となっています。
  林業再生のためには、国産材の需要拡大が不可欠です。木材用途の40%強は建築・土木で使われており、国産材は日本の気候と風土に適した建築用材で、環境にもやさしく耐久性のある住宅をつくることが出来ます。
 国産材の需要拡大のために、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が今年5月26日に公布され、国や自治体が公共事業や土木事業で国産材の優先的利用を制度化する方向を示しました。この方針を速やかに具体化し、需要の数値目標を設定することが必要です。また、国は自治体が取り組んでいる住宅建設や増改築などへの助成制度に支援をするとともに、国の制度として融資や税制上の優遇措置を講じて、住宅建設などでの需要拡大を強めることが求められます。
 近年の住宅建設は、大手住宅メーカーが住宅販売市場をほぼ独占する状況で、在来工法の木造建築の普及は激減しています。
 国産材を使った住宅建設や増改築などへの助成制度と合わせて、日本の気候に適合した住宅は、国産材を用いた人に優しい家屋にこそあるという特徴をアピールすることが求められます。国産材をふんだんに使った住宅の普及には、消費者にとって近づきやすい販売システムの構築が必要です。そのためには、消費者が納得し安心できる状況をつくり出すことで、住宅展示場を県内数カ所に設置することです。林家・林業事業体と木材産業、さらに住宅産業が提携し、奈良県が支援することが重要です。
  また、木材の生産段階ででる林地残材や樹皮、端材などの有効利用は、林業再生にとって欠かすことは出来ません。最近では、木質バイオマスや繊維板などへの利用が行われるようになってきましたが、低質材や未利用資源の活用に向けた新たな木材加工・利用技術の開発のための研究が求められます。さらに、吉野林業の主要な生産品であるの間伐材の需要開拓、商品化研究は重要な課題です。

  生産コストの削減と生産性向上
 輸送手段や林業機械が発展するなかで、林道・作業道の整備は、作業環境の改善とともに、素材生産費の削減、コスト引き下げに欠かせない課題です。こうした林業の基盤整備に対する援助が少ないことが、森林の管理放棄を誘発し、林業生産のコストを上昇させる原因の一つになっています。
 生態系や環境保全に配慮した林道・作業道の整備については、全国一律の助成制度ではなく、現場の実態に見合った助成制度をつくり、国の責任で思い切った援助が必要です。
  また、間伐・植林などの林業経営を、京都議定書にもとづくCO2排出量取引や吸収源活動に位置づけ、経済的利益に換算して、生産コストの削減などにあてることについても、直ちに取り組む必要があります。

 機械化、人材の育成
  林業は、専門的知識と技術が必要です。林業就業者は年々高齢化と減少の一途をたどっており、後継者の確保は急務となっています。
 1000万haの人工林の維持管理には、最低でも20万人の作業員が必要とされていますが、絶対的な人員不足の状況となっています。林業の再生と活性化に向けて、国は自治体や業界と協力して、系統的な林業就業者の確保と育成に責任を持って取り組むことが求められます。

 林業の新たな担い手づくり
  林業経営の深刻な不採算状態と後継者不足という状況は、森林の荒廃を招く原因ともなっています。山に手を入れ森林を保全していくためには、山林の所有権と山林の管理権限を分離し、施業を担う受け皿として森林組合などの新たな担い手づくりが重要です。
 山林所有者との合意形成を図りながら、林業の新たな担い手づくりを推進することもまた現代的な課題となっています。


 6,具体的な政策

(1)国に対する要求

 1、林業基盤整備事業を系統的に推進する
 素材生産費の削減、コストの引き下げで、価格競争に耐えられる林業に転換するためには、林道・作業道の整備は避けて通れません。輸送手段や林業機械が発展するなかで、全国一律の助成制度ではなく、地域の実情を踏まえた林業の基盤整備に対する系統的な援助を行うことが必要です。

 2、間伐促進に向けた補助制度を拡充する
  間伐の遅れを集中して解決するため、間伐に要する経費について助成するとともに、間伐材の利用促進を図ることが求められます。経費の助成にあたっては、助成対象を広げ、すみずみまで行き届くようにすることが重要です。

  3、排出量取引やカーボン・オフセットの推進で、林業経営に経済的効果をもたらす
 森林のCO2吸収効果を数値化し、排出量取引の推進を図って間伐等の温室効果ガス削減効果を経済価値に置き換え、素材生産費の削減につなげることが求められます。
 また、木質バイオマス発電による地域のエネルギー確保を、カーボンオフセットの具体化として推進することが重要です。その際、林地残材や樹皮は法律上は産業廃棄物として扱われ、産業廃棄物処理施設としての許可が求められることがネックとなっています。この点での適切な対応が求められます。

 4、外国産の木材輸入に規制を加えるとともに、国産材の海外市場への進出をはかる
  これまで進めてきた木材の輸入自由化や丸太の関税撤廃など、無制限な外材輸入に規制をかけ、国内の林業・木材産業の適切な保護を図ることが重要です。加えて、世界の木材需要が長期的な増加傾向にある中で、国産材の供給先として海外市場の開拓を進めることが求められています。

 5、機械化の推進と人材の確保を進める
  林業は、専門的知識と技術が求められます。林業就業者は減少の一途をたどっており、後継者の確保が急がれます。人工林の維持管理に必要な作業員が、絶対的な人員不足の状況です。林業の再生と活性化のために、自治体や業界と協力して、系統的な林業就業者の確保と育成に取り組むことが求められます。

  6、公共建築物への国産材の利用の具体化
  本年5月26日に公布された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に基づく国産材の利用促進のために、数値目標を含む具体化を図ることが緊急に求められます。

(2)奈良県に対する要求

 1、県産材の需要を拡大する
 ○学校・公民館・体育館などの公共施設や土木工事に、県産材を使用するよう誘導目標 を設定して推進します。
  ○学校や事務所の机・椅子を地場生産の木製品に入れ替えます。
 ○県産材使用の住宅に対する補助制度を拡大するとともに、利用しやすい制度にします。
 ○県産材をふんだんに使用した住宅への需要をたかめるため、林業関係者・木材関係者 ・建築業者などと県が協力し、住宅展示場の設置などでエンドユーザーへのアピールを 行います。
  ○商店街のアーケード、歩道のタイルなどにも木材の使用を進めます。
 ○幼齢期の間伐材の活用をすすめます。

 2、森林づくりを系統的にすすめる
  ○山林所有者の合意を得て「県森林づくり基本指針策定事業」を具体化し、「林業生産 林」と「環境保全林」のゾーニングを行います。
 ○森林環境を維持し保全するために、急傾斜地や尾根筋等については、山林所有者の合 意を得て、自然林(針葉樹と広葉樹の混合林)にするよう努めます。
 ○世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」を支える森林づくりを進めます。

 3、木材の生産コストの引き下げを援助する
  ○地域の条件を生かした林業の基盤整備を進め、生活林道、作業林道の整備を促進し、 モノレール設置事業を支援します。
 ○ヘリコプター出材に補助します。
 ○間伐への助成は、対象を1ha以下にも広げて実態に見合ったものにします。
 ○鳥獣被害対策を進めるとともに、実態に見合った助成を行います。

 4、森林組合・林業事業体を支援する
  ○植林・保育・伐採を援助できるよう経営基盤を強化します。
 ○常勤の作業員と経営指導員を配置します。
 ○公共事業等の事業量を安定的に確保します。

 5、林業就業者を確保し、養成する
 ○研修制度を充実させます。
 ○新規就労者対策として、住宅対策の拡充、生活支援策を創設します。
 ○林家の後継者を支援するため、一定期間の生活を保障します。

  6、林業就業者の生活を支援し、労働条件の改善を図る
 ○給与・社会保険・退職金制度を充実します。
 ○就労日数の確保・安全対策を講じます。

  7、水資源や緑を確保する森林施策を推進し、自然災害に強い森林管理を確立する
  ○林業地域にある市町村でのバイオマス発電の事業研究、事業推進を県として支援し、 積極的にすすめます。木質バイオマス発電による地域のエネルギー確保を具体化する際 には、林地残材や樹皮は法律上は産業廃棄物として扱われており、産業廃棄物処理施設 としての許可がネックとなっています。この点での適切な対応が求められます。
  ○グリーンツーリズムを援助します。
  8、森づくり並びに林業及び森林産業振興条例に基づく施策の具体化
  ○路網の計画的な整備を推進するとともに、森林施業の集約化の促進を行います。
  ○関係者の意見を聞いて施策を具体化し、数値目標を定め実効性のあるものとします。

 
 日本共産党は林家・林業事業体や木材業者のみなさんの運動を期待します

 現在の林業危機と木材産業の不振は、自民党を中心とした政治が招いたもので、時間がたてば乗り越えられるというような事態ではありません。アメリカや財界の言いなりになって、貿易の自由化という名のもとに外材輸入を無原則に容認してきたことが、今日の業界不振の根底にあります。またさらに、建築基準法の改訂や建築規格の変更などを通じて、国産材を市場から締め出してしまう結果を招きました。
 林業と木材産業を、産業として日本経済の一つの柱にしっかりと位置づけ、国の政策として林業と木材産業そして建築業の再生を図ることが求められています。
  森林を守り、林業・木材産業を発展させるためには、すべての林家・林業事業体と木材業者、そしてこれに繋がる業界が団結し、林業・木材産業の再生の運動を自らおこすことが求められます。
 また、木材の産直、健康住宅づくり、自然保護、森林学習などの運動を進める多様な市民運動とも連携し、国民的な規模で運動を進めることが重要です。
  日本共産党はみなさんの自主的な運動と連帯し、これを支援するため頑張るものです。


                     「吉野林業:奈良県林政課版」を参考にし、引用した箇所があります。

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【参考資料】
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 国の林業施策について
  2010年度における国の林業関係予算は、一般会計で公共事業1970億円、非公共事業904億円、国有林野事業特別会計4501億円及び森林保険特別会計48億円が計上されています。
 特に、重点的に取りくむとされる施策としては、
①路網整備と利用間伐の推進、高性能林業機械の導入促進、集約化施業の加速化による効率的な森林整備と間伐材等の安定供給の推進
②間伐材をはじめ国産材の活用に向けた国産材住宅の推進、バイオマス利用の促進、新規需要の開拓
③需要変化に対応した木材産業構造の確立
④社会全体での森林資源の保全・活用による山村再生システムの構築
⑤地域の安全・安心の確保に向けた治山対策の推進
                            の5項目を挙げています。
      *

 森林・山村に係る国の地方財政措置
 森林・山村対策として、
①公有林等における間伐等の促進に要する経費
②国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した、「森林情報の収集活動及び境界の明確化等」の活動に対する経費
③国が実施する「緑の雇用担い手対策事業」と連携した林業の担い手確保に必要な実地研修及び新規就業者定着のための福利厚生等への支援
④民有林における長伐期・複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進
⑤地域材利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策に要する経費の地方交付税措置の継続
⑥ふるさと林道緊急整備事業に要する経費に対する地方債措置及び地方交付税措置の継続
⑦公有林における作業道の整備に要する経費の地方交付税措置
                                                       の7項目を挙げています。
      *

 森林のもつ多面的機能の持続的な発揮に向けた整備と保全
 1,京都議定書目標達成計画等に基づく施策の展開
 京都議定書の目標達成に不可欠な森林による吸収量を1300万炭素トン(第1約束期間の年平均値)確保するため、間伐を毎年55万ha、6年間で合計330万ha実施することが必要としています。このため「京都議定書目標達成計画」、「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」等に基づく取り組みを通じて森林整備の加速を展開するしています。
  具体的な取り組みとしては、
①間伐の遅れを集中的に解消し、「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」に基づき間伐を推進すること、利用間伐を推進するとともに、路網の整備、高性能林業機械の一体的な組み合わせによる林業生産コストの低減を図るとともに、「緑の雇用担い手対策事業」の拡充による担い手確保・育成を図ること。
②木材・木質バイオマス利用の促進を図り、排出量取引やカーボン・オフセットの推進により、化石燃料代替利用による排出削減や森林整備でのCO2吸収の取組みを推進する、としています。

 奈良県の林業施策について 
 2009年度の重点施策として、①森林づくり基本指針策定事業(90万円)、②森林情報統合推進事業(1980万円)、③県産材安定供給促進事業(7538万4000円)、④奈良県版新生産システム構築事業(160万円)、⑤林業機械化推進事業(1570万3000円)、⑥山村振興等農林漁業対策事業(4916万7000円)、⑦林業構造改善事業(1895万7000円)、⑧間伐材利活用事業(59万8000円)、⑨奈良県地域材認証支援事業(973万7000千円)、⑩県産材利用促進活動支援事業(100万円)をあげて取り組んでいる。
 また、2009年度の林務関係事業として、①林道事業(10億5248万円)、②森林整備地域活動支援事業(2億5970万2000円)、③森林造成事業(4億5246万6000千円)、④治山事業(7億6829万8000円)、⑤条件不利森林整備特別対策事業(1083万8000円)などを実施しています。         
  森林環境税の導入とその取り組み状況について
  奈良県では、2006年度から年度2010年度の5カ年間に限定した森林環境税を課税しています。個人では年額500円、法人では均等割額の5%(資本等の規模に応じて年額1,000円から40,000円)で、年間約3億5000万円の税収となっています。
  森林環境税を充当した取り組みとしては、①奈良の元気な森林づくり推進事業(1230万円)、②森林環境保全緊急間伐事業(3億9680万円)、③森林環境教育推進事業(3392万円)、④里山林機能回復整備事業(460万円)が実施されています。  ( )の中の金額は予算額