消防の広域化で県民の財産、命が守れるようになるのか?
各地の消防の消防力を強めることを県が支援することこそ必要
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奈良県は、県内の常備消防体制をとる6市7組合、13消防本部を全県1つに統合する「広域化」をすすめることを決め、推進しています。
6月県議会、山村さちほ議員が消防広域化問題を取り上げ、消防署員など消防力の基準をみたす消防本部が1つもない現状のまま、消防本部を県一本に広域化することで災害から県民の財産と命を守ることが充実するとは考えられないと指摘。各消防署が職員を確保し、ポンプ車や救急車を増やすなど消防力を確実に強めることを国と県がしっかり支援することが必要と強調しました。
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奈良県が作成した「奈良県消防の現状と課題報告書」から作成した各消防本部の消防力を次に紹介します。充足率を示しています。
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また、6月県議会の総務警察委員会(6月9日開催)における山村さちほ議員の消防広域化計画についての質疑も、紹介します。
11年(6月)議会
初度総務警察委員会
11・6・9 山村さちほ議員の質問
県防災計画の見直し 東日本大震災の教訓をしっかりと見直しのなかで位置づけを。日ごろから過疎化・高齢化により特別な対策が必要な地域での身近な行政の支援をどうするのか、位置づけがされていない原子力発電所事故もしっかりと位置づけを
山村さちほ議員 東日本の大震災の教訓から防災計画を見直されるということでことですが、私も1点、お伺いしておきたいと思います。原子力発電所の事故の対応についてです。
奈良県は、福井県の原子力発電所の100㌔圏内にございます。県防災計画の現状では、この原子力発電所の事故というものは想定されていないわけですが、今回のああいった事態を見ますと、住民の方からも私、手紙をいただいているのですが、奈良県の対応はどうなのかと大変ご心配をなさっております。こういう点を含めまして、県防災計画の見直しのなかではぜひとも位置づけていただきたいと思います。
私も6月3日から福島県いわき市にボランティアで行ってまいりました。現地の方からお話もお伺いいたしまして、現場も視察をさせていただきましたが、本当に深刻な状況で、大変な状況になっていることを実感いたしました。
今回の被災地域の多くは高齢化がすすんでいる中山間地であるとか漁村などの海岸地域ということで、日ごろから過疎で「限界集落」といわれるような特別な対策が求められている地域での災害で、混乱が増大しているということを実感いたしました。
奈良県内におきましてもそのような地域がたくさんありますから、住民に身近な行政の支援が行き届くような対策ということを日ごろからとっておくということが非常に大切だと思います。
ですから、見直すということでは、この点もしっかりと位置づけていただきたいということを強く思っております。ぜひ、検討していただきたいと思います。
今、大きな問題になっております原子力発電所の事故ですが、これは人災であったということがはっきりとしてきたと思います。福井県の原発の14基も非常に危険な事態にあるという実態があると思います。この点に関しては、政府に対して安全対策を万全に講じるということを奈良県としても強く求めていただきたいと思いますので、これを要望しておきます。
消防広域化計画 広域化で、大きな災害から住民を守ることができるようになるとは考えられない。広域化よりそれぞれの消防力を強めることこそが課題
山村さちほ議員 県では「消防の広域化」の計画がすすんでおります。しかし、これがはたして災害時に住民を守ることになるのかという点では、大いに問題があるのではないかと思っております。
スケールメリットということで、合併して大きくなればメリットになる点があるということを、これまでも強調されておりますが、今回の事態は身近なところで、すぐに手立てがとれる対応がとれる仕組みがあるかどうかということが問われていると思います。1本の指揮系統ということになりますと、大変な困難をきたすことになるのではないかと懸念されていると思います。
特に奈良県の消防力は、消防力の整備指針からみました職員の基準に対する充足率は非常に低く、全県でも63%ですから、やはり、「広域化」以前の問題として現場の人を増やすということが必要であると思いますが、この点についてどのようにお考えなのか、伺っておきたいと思います。
知事公室次長答弁 現場の職員も定数どおりにはなっていないと聞いております。この「広域化」というのは、そもそも現場の要員をふやす必要がある、初期対応が非常に大事であるということで、広域化することによって総務・指令関係を一元化し、命令が一直線におりていく、あわせてその人員が削減できる要員を現場要員として確保できるということで、現場対応の人員を増やしていかないと、今、一次対応で出ると、次の2次対応には出ていけないような状態の消防本部がたくさんあります。
今は、待機している要員を呼び戻さないといけないというような状態でありますので、現場の要員を大規模災害などに備えられるような体制づくりをやっていきたいということで広域化をすすめており、スケールメリットはあると考えております。
人員の問題ですが、市町村消防(の財政)もそれぞれ厳しい状況になっており、人員削減等されております。どこも同じであると思います。人員を増やせばいいという話はなかなかうまくいかないわけです。そこで広域化をしてスケールメリットを出していこうと、現在取り組んでおります。また、これは全国的な取り組みとなっており、現在、一本化ということですすめているのは5県で、他に18道県・26ブロックで広域協議会ができて、すすめられており、全国的な取り組みとして発展をしております。
メリットはあって、広域化をすすめないことには小規模消防では大きな災害に即対応するということはできないというところがあるため、1つになって、大きな災害にもとりくむという体制づくりをやるというのが目的でございますので、ご理解をいただきたいと思います。
山村さちほ議員 奈良県の場合は、広域化の点では、市町村が広域連携、広域連合という形で、現状でも広域化した状況で運営されている。そういうなかで、さらに一本化するということになりますから、現状のなかでも困難があるとされるなかで、困難が大きくなったから、現場に近く、早く人を派遣できるかどうかという点では、私は、もともとの人が少ないところに、いくら集まっても(一本化しても)十分にはならないという点で懸念があると思います。
これは奈良県だけの問題ではなくて、今回のような大災害といった場合に奈良県だけで考えるということではなくて、全国で考えなくてはならない問題であるべきです。消防職員の人のあり方がどうかということは、奈良県だけではなくて、また小さな市町村でたくさんの人をかかえることの困難性もあります。そこをどう考えていくのかということは国として考えていかないといけない問題が大いにあると思います。
この点については、今後、引き続き議論をしていきたいと思います。
今回の災害を通じて、公務員の皆さんが命がけで住民の命を守るために奮闘されたということが各地で報道されていますし、実際にお聞きしてきました。自らの命を顧みず、住民を救って亡くなられた、犠牲になられた方もたくさんおられます。そして現在も、自ら、自分たちも被災されていながら、それは後において、人々のためにと働いておられる姿をたくさん見てきて、本当に敬意を表したいと思いますし、今のように公務員は少なければ良いというような風潮、効率化が最優先というようなやり方でいいのかどうかということを、今回の事態が問うていると私は思います。
やはり、県としても、その点、しっかりと考え直すということが必要ではないかと思いますので、その点は、ぜひお願いしておきたいと思います。
(了)